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人新世の資本論を読みかえす~松岡さんの座・読書

2021年の春、古賀史健さんの「書く人の教科書」を読んだことで本に対する思いが変わってきました。

 

書くことを鍛えるなら、まず読むことを鍛えよう。

 

自分に欠けていた姿勢をこの本によって指摘されたことで、私のちっぽけな普段の暮らしの視界が少し変わりました。
緊急事態宣言も延長されたので、新しい本を買うこともなく時間のある時に手元の棚からひとつかみ(タナツカ)しては読んでいます。以前と大きく変化したのは、心の中で必ず声を出して読んでいることです。こうすると、なぜか読むスピードが遅くなります。それだけ読んでいたつもりでも見過ごしていた言葉が多かったんでしょう。

 

  参考ブログ記事 「書く人の教科書」を読んで泣いたあとで~松岡さんの座・読書

 

今日は、そんな状況の日々において何度も繰り返して読んでいる本について書いてみます。
私が最近強く感じている「今の世の中が、どうもオカシイ。」という違和感のいくつかを明確に文章にし、それをどのようにして解決していくのか?という方法を論じているものです。

人新世の資本論を何度も読みかえす~松岡さんの座・読書 松岡さん.com

粗すぎるあらすじ

この本の粗すぎるあらすじはこんな感じ?・・・かな?

 

人類が「儲けたろ」とビジネスを続けた結果、やりすぎてしまって地球そのものがおかしくなってきた。このまま続けていると、恐らくすぐにでも地球の環境が回復不能になるほど破壊されて、今の暮らしが不可能になってケンシロウが居らん北斗の拳みたいな世界になってしまう。

 

確かに今の環境なんかオカシイな・・・と感じている人は沢山いると思うんやけど、「儲けのおこぼれ」を貰って暮らしていているので、無くなったら困るから見て見ぬふりをしてるのと違うかな?

 

環境問題解決に協力するために、エコバッグやマイボトルを持って買い物してるし、電気自動車に乗り換えたりしてるねん、なんて本気で思っているの?アホちゃう?

そんなんで問題解決したら、オレこんな本書かんし。

 

この問題は、オレたちの生き死ににかかっている。

この問題を解決するには、今すぐ行動しなければならない。

この問題を解決するには、多くの人々の心と身体に沁み渡っている「儲け続けな生きていかれへんやん」という幻想をリセットして取り組まなければならない。

 

オレは、この問題を解決する方法を1つ考えた。良かったら読んでくれ。

 

ってなところですかね。

繰り返し読んで感じたこと

この本は冒頭から、地球温暖化対策として、エコバッグやマイボトル使ったりハイブリッドカーに乗っている人々を「その善意は無意味、むしろ有害である」とぶった斬り、国連が掲げ各国政府や大企業が推進している「SDGs(持続可能な開発目標)」も目下の危機から目を背けさせる効果しかない「大衆のアヘン」とぶった斬っております。

資本主義のグローバル化が進んで世界各地にまき散らしている色々な問題の中に地球環境の破壊が入っているということ、その破壊は近い将来修復不可能な状況に至る可能性が非常に高いにもかかわらず、資本主義のシステムはその解決方法すら成長のネタとして活動することしかしない(できない)・・・という指摘は、私がこの本の中で最も共感したところであります。

 

一方、解決策として述べている、<コモン(水、電気、食料、医療など誰もが必要とするみんなのための財産)>を資本主義から取り戻し、民営化ならぬ「市民営化」にして我々の手で利潤追求とは無関係な経済システムを作り再建することで「ラディカルな潤沢さ」を得る「脱成長コミュニズム」を持って臨むべきだという主張は、共感する部分もあるけど少々ブッ飛んだ感があるな~とも感じました。

 

しがない日本人のオッサンにとって、コミュニズム=共産主義という言葉に対する嫌悪感とか拒絶感って結構根深いと思うんです。その感覚を払しょくするだけでも相当の時間と試行錯誤が必要なのでは?と感じます。

ただ、斎藤さんは旧ソ連型の共産主義は完全に否定しており、最近明るみになったマルクスに関する資料に基づいて「資本論」の再研究から導き出した、<コモン>の再建からスタートする共産主義を提案しています。

 

なかでも第六章において、コモン再建最初の実践の場として協同組合やワーカーズ・コープの重要性を指摘している点は二番目に共感したところです。

 

で、三番目に共感している部分は「この問題が大き過ぎるから何もしないことの言い訳にしてはいけない。すぐにやれること・やらなくてはならないことはいくらでもある。」です。

 

すなわち、この大きな問題が、自分の暮らしの中にどのような形で対峙しているかを知ること、どのようにすれば解決に向かうのかという方法を考え実践してみるということです。

 

若い人のパワーと気持ちには敵わないにしても、オッサンならではの経験とズルさをもって臨むのは、やはりするべきことなのでしょう。

な~んてことを、何度もこの本を読んでみて確信しました。

 

興味を持たれた方は、ぜひお読みください。